斜線制限の救世主、天空率。その制度や実例を分かりやすく徹底解説!
★今、注目のコンテンツ
「家を建てる!」と思ったら、どんな家を建てようかと理想や希望が膨らむものですよね。しかし、実際には住宅を建築するにはさまざまな制限に則った上で設計する必要があり、必ずしも自分の思う通りの家を建てられるとは限りません。
しかし、中にはこの制限のひとつである、「斜線制限」の基準を満たしていない建築物を見かけることもあります。恐らくそれは、「天空率」に基づいて住宅が建築されているためでしょう。
ということで今回は、「天空率って?」という方のために、天空率計算について詳しくご紹介していきたいと思います。
天空率とは
斜線制限の緩和策として生まれた法規制
住宅を建築する上での高さ制限は、以前にご紹介した「斜線制限とは?北側・道路・隣地それぞれの詳細について解説」など、さまざまな法律によって法規制が行われています。
しかし状況によっては、これらの法律に則って建築することが難しい立地も。そのようなケースの緩和策として生まれたのが「天空率」なのです。
平成15年に天空率を用いた緩和が施行されるまで、道路斜線制限や北側斜線制限に少しでも引っかかってしまうと、特に採光の妨げになっているわけではないのにも関わらず建物を建てることができませんでした。
しかし、それでは建築物を建てられない場所が増えてしまう一方です。そこで、建物と空の比率で採光面積を確保できているかを判断する新たな基準、「天空率」が生まれました。
これにより、道路斜線制限や北側斜線制限で不適合となってしまった場合でも、天空率の基準に適合すれば建物を建てることができるようになったのです。
従来の高さ制限との違い
斜線制限では、定められた勾配を満たさないと建物を建てることができなかったので、規制に適合するように、建物が斜めになるような設計をして建築しなければなりませんでした。
今でも、屋根が斜めに造られていたり、少しずつ上階の面積を小さくすることで斜めに設計されている建物を見ることがありますよね。
しかし、建てる人がこうした斜めのデザインを嫌がったり、上階や屋根を有効に利用したいと考えたときに、天空率を利用すればデザインを自由に設計できたり、空間を有効に医療することができるようになります。
天空率の適合条件とは
天空率はどうやって算出するの?
天空率を数値化して表すには複雑な計算が必要で、測定地点をどこにするかという算出方法も非常に細かく、なかなか一言で表すことが出来ません。
簡単に言ってしまえば、所定の地点から天空を「魚眼レンズ」で見上げたときに、建物に対してどのくらいの空の割合があるか……によって判断する、と考えれば分かりやすいと思います(それでもなかなか直観では理解しにくいですが……)。
斜線制限で適合する建築物と実際に計画している建物を天空率で比較したとき、計画建物のほうが採光や通風を確保できると判断された場合には、天空率による緩和措置が取られることになっています。
天空率で緩和できないもの
さまざまな斜線制限を緩和できるとされている天空率ですが、中には緩和できないものも。それが「日影規制」と「高度斜線」です。
「日影規制」とは、建物を建築したことで、周囲に全く日が当たらない場所が出来ないよう行われる建物の高さ制限をいいます。日影規制を天空率で緩和することはできませんが、建物の高さを調整して計画することなどで回避できるでしょう。
そして「高度斜線」は、各行政など建築基準法以外の方例で定められている制限のため、天空率を適用することができないのです。つまり逆説的に言えば、天空率は建築基準法で定められている法令には適用できるもの、だとも言えるでしょう。
おわりに
天空率は建築基準法に定められている斜線制限を緩和できる、有効な措置の一つです。
まだ一般住宅の適用事例は少なく周知もあまり為されていないため、たとえ天空率で斜線制限を緩和できたとしても、あまり大きな建物を建ててしまうと近隣の住環境を乱したとされ、苦情が発生することもあり得ます。
もし一般住宅で天空率による斜線制限の緩和を適用させる場合には、周辺の環境に配慮した計画建物を設計し、必要に応じて近隣の住宅に「天空率に基づいた住宅を建築する」という説明をすることが望ましいでしょう。
天空率による緩和を受けたからといって、制限いっぱいの大きな建物を建ててよいというわけではないことは理解しておきましょうね。